国籍

自国籍者外国籍者
国内保証自国の判断
国外相手国次第無関係
法によって様々な権利が保証されるのは国内にいる自国籍者だけです。外国・外国籍者は自国とは別の法体系下にあるため、法で国内にいる外国籍者の権利を保証したり制限したり*1すると自国の秩序は保たれますが外国・外国籍者が本来持つ権利を侵す可能性が、国外にいる自国籍者の権利を保証すると外国の法を侵したり秩序を乱したりする可能性があります。国政に干渉することになるので、そのままでは法で決めることができません。
このために国外にいる自国籍者、国内にいる外国籍者の権利をどう扱うかは両国間の条約で定めることになります。日本では一時期、いわゆる不平等条約という形で日本国内で外国人が法を侵しても日本の法ではなく外国の法で裁くというような体制がしかれたこともありました。条約によって相手国で自国籍者の保証を求め、自国で相手国籍者の保証をしているのです。条約による差別いや区別は正当な理由なので必要ではありませんが、国籍による差別を行わないようにするため、直接条約を結んでいない国の国籍者にも出来る限りの保証をすることがあります。だから、たとえ条約を結んでいるのが一国だけであっても、全体に対して最低限の保証をすることが期待されます。日本の場合、たいていの国と国交を結んでいるため、ほとんどは条約によって外国籍者の持つ権利保証がされているはずです。このへんが、自国籍者と同等の権利(主に生存権やこれに依存する社会保障など)を外国籍者に認められる理由の根底にあります。
とはいえ国交が無ければ保証が確認できないのですから、国交のない国からは保証のされる国に退去することになります。また、何らかの事情で国政が停止したり行政による保証が正常でなくなるような国、例えば戦争や紛争、災害や疫病の起こっている国などに対して日本政府は自国籍者の退去を呼びかけます。政府が相手国に求めている自国籍者の権利保証ができないからであり、単に戦闘や災害で危険だというだけの理由で退去を呼びかけているわけではありません。たとえ戦争中でも相手国が保証するなら退去を求めることはありませんが、疫病は自国内の管理が行き届いていないから流行ったりしているのです。日本とアメリカが交戦をするにあたって国交の断絶、すなわち国交を決めた条約が無効化され、同時に両国間のすべての条約が停止されました。これによって権利保証がなくなるため、戦前・戦中に両国から本国の指示で帰還が行われています。
外国に対して国内であるのと同様な保証を求めるのは住んでいる国に対する傲慢であり、住んでいる国の法による保証を求めるのは拠る法が異なる以上、越権でしかありません。日本国籍者は日本の法と国家という支えをもった上で外国での生活が保証され、逆もまたしかり。外国籍者の権利保証は、国と国の関係に依存し、好意でも傲慢ではなく両国間の協議できめられているのですから、国外で過ごす場合には常にそうした両国の関係を意識する必要があります。
また、拠って立つ法を相手国のものとするために国籍を変えることも可能なのです。出身国の法に拠って生きるか相手国の法を受け入れるかは個人の意志で選択できるものですが、法が異なる以上、あいまいにはできません。


上記の表の例外として、日本が国外にいる日本籍者に対して無条件に保証しているものが一つだけあります。他国の権利を侵す可能性が一切無い参政権のうち選挙権、国政選挙の選挙権は世界のどこに居ても日本政府が保証しています。
昨今とりだたされる外国人の参政権について。外国人の参政権を認めると、日本国内で自国籍者と外国籍者の間の差はなくなるけれども、外国籍者は本国(A国)で保証される選挙権に加えて外国(日本)の選挙権を持つことになり、当事国(A国)の国籍者間に不平等が生じることになります。これを無くすためには、全国籍者(A国)の外国(日本)での選挙権を認めさせるか、国外(A国外)にいる時は選挙権を停止するかという選択が迫られます。日本政府単独の決定で他国の法が動かされるのです。
騒動の中心になっている韓国籍者の場合、韓国が国外での国政選挙権を認めていないから日本での国政選挙権を認めることは不可能ではないのですが、日本の判断で韓国籍者のみに認めると日本国内で国籍による差別をすることになるため、両国間で相当の条約を結び、韓国が日本での国政選挙権を保証する形をとる必要があります。
国外にいる日本国籍者に地方参政権が無いことを反転して国内にいる外国籍者に地方参政権を認めることは可能ですが、一方で、地方政治が国政と繋がっている存在であることを無視することもできないため、どちらをとるかは政治の判断となります。
公務員就任に関しても同じこと。特定の国籍者の扱いは条約で相互性・相対性を、国を特定しない全ての外国籍者の扱いは国内政治の判断で行います。


概念として分かってても説明するのむずかしー。

*1:日本人同等の権利を保証しても、それ以上の権利が本国で保証されているならば、日本がその国民の権利を制限していることになる