俺よりデカい奴に会いにいく
噂の、あのでっかいヤツを見てやろうと、思ってみたのだ
時計は11時30分、新宿駅を出発する。本当はもっと早い時間にと考えていた。
新宿御苑に用は無い。
12時。千駄ケ谷駅にある空を飛びそうな怪物体。いわゆる東京体育館。裏側にある、その巨体のわりに小さいなにやら。だが、これだって小さくは無い。
12時30分。ハゲ頭。
サボテンに、その脇のトンネル。
13時。ITバブルの塔、丘の上にたつ六本木ヒルズ。
13時30分、雨が降ってきた。むかし、ここもまたアニオタの聖地であった。麻布十番、一の橋公園。かつてあったはずのものは無く、一部は工事で入ること叶わず。いつのまにこんなことになってしまったんだ。
14時。多くの敵と戦い、今なお現役バリバリ東京タワー。
14時30分。田町駅、東海道線を越え、人の手によって作られた人工の大地へと足を踏み入れる。
トンネルのように見える橋。この辺にはこんなのがいくつかあるらしい。この不思議空間の誘惑を打ち払えず、妙にテンションが上がり始め、予定外の行動をとり始めてしまう。
芝浦は運河の町。川ではなく、海によって切り分けられる土地。
15時。運河の上の構造物、構造物。ガコンガコンと鳴り響いてゆっくり走る新幹線の回送線。
これもまた、トンネルではない、橋でもない。品川の車両基地をくぐる長い長い通路。
ガシガシ動かすと何かを出すかもしれない公園の遊具。周りは運河だし、本物だとしたら、かなり頑張らないと水にはたどり着けないはず。
15時30分。もはや何をやりたいのか分からなくなってきた。水処理施設の配管。
気を取り直して
16時。多くの場合、人々は向こう側。見慣れた、良く知れたおおきな螺旋を見上げる。
うねる構造物。高速道路に一般道、ゆりかもめ。はるか頭上に浮かぶ道。
やがてたどり着く陸の端。
レインボーブリッジは自転車進入禁止となっている。ただし、折りたたみ自転車で、手に持つことができるならば問題ないらしい。乳母車も見かけたから大丈夫だが、車椅子はどうなのだろう。
橋を支える巨大な壁、その中は実はがらんどう。入り口は2階、7階が一般道、6階展望室はなぜか立入禁止、間の階は事務室だかなんだか。ここは吊り橋を吊るケーブルの一端を集め、橋を引っ張り支えるためにある建造物。
橋の下には公園がある。区の運動施設、かいがんぱ〜く。ここは橋の全景を間近に眺め、ぐるりと開けた眺望も楽しめるスポットであるのに、実に不人気。なぜなら、鉄道の駅は近くになく、駐車場も用意されていないから。
橋に用意された歩道は実は恐ろしい。風を通すため壁や窓で覆うわけにはいかず、網が張ってあるだけの素通し。うっかり手から落としたものが転がっていったら、二度と拾うことは出来ない。あっという間に50メートル下の世界。
車がギュンギュン走る道路から離れられる橋脚部は安全地帯。端の外へと張り出し、座って景色を眺められる休憩所。でも、じっとしてるとやっぱり車の振動がやってくる。
分かりにくいが、鉄骨が虹の色に塗り分けられている。橋の端は青、中央に向かって赤に向かう、内側からしか見えない虹色。
台場側の橋脚部から、対岸の芝浦側にある休憩所と足元の公園かいがんぱ〜く。芝浦側はアンカレイジも橋脚も陸続き。
端の傍に居座る台場砲台。
の、登りたい。橋を吊るワイヤーと、台場アンカレイジのナナメ屋根。なんかイベントしてくれないですかね、普段入れないところに入って命がけの冒険をさせてくれるような。
完成からすでに15年が経っているレインボーブリッジ。メンテナンスは欠かさないし、安全の強化もしている。
歩道がいつまでも金網で守られていると思ってはいけない。
ふとみると歩道の脇から下に向いた階段。関係者専用の注意が付いているようすもなく、頼りない鉄製のなにやらではなくて、タイルの敷いてあるちゃんとしたもののよう。
これはなんと、橋の下を見ることのできる通路。
作業用じゃないのでしっかりした通路になっている。海面までかなり近いのだが、やっぱり落ちるかもしれない恐怖にどきどきする。
足の下に広がっている世界が見えなければ怖くなど、ない!
橋の下で道の反対側の歩道に繋がっていて行き来できるようになっているのだった。振り返って、歩いてきた橋に挨拶。
もうすぐ橋を渡りきる。対岸へ届く。
この橋の敵は風。もちろん天気にも気をつけたい。時間外の侵入や危険時には立入を阻止する扉が閉じられる。
ながい長い道だった片道1500メートル。
あそこを歩いてきたのだとしみじみ